論文抄録

第127巻第6号

症例報告

Swept-source光干渉断層計で観察できた偽重複乳頭の1例
町田 弓美子, 森 隆三郎, 川村 昭之, 中静 裕之
日本大学病院眼科

背 景:Swept-source光干渉断層計(SS-OCT)で副乳頭の構造を詳細に観察できた偽重複乳頭の1例を報告する.
症 例:62歳,男性.左眼の滲出型加齢黄斑変性に対する加療目的で受診した.初診時,左眼の黄斑部に平坦な漿液性網膜剝離および視神経乳頭下耳側近傍に副乳頭を認めた.SS-OCTでは,網膜内層が副乳頭内中央まで連続して認められたが,外境界膜,ellipsoid zone,網膜色素上皮は副乳頭周囲で連続性が途絶えていた.また,副乳頭の中央深部では脈絡膜の反射が確認できず,強膜の境界線と思われる高反射が鮮明に観察され,視神経が存在しないことが確認された.フルオレセイン蛍光眼底造影検査では,主乳頭からの網膜動脈が副乳頭内中央のリング状血管に連続し,毛細血管がリング状血管から副乳頭内へ放射状に伸び,インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査では,副乳頭内は脈絡膜血管の走行を確認できず低蛍光を示していた.
結 論:副乳頭は主乳頭と類似した構造であったが,強膜を貫通する視神経が存在しないことがSS-OCTで確認でき,偽重複乳頭と診断された.SS-OCTが偽重複乳頭の診断に有用であった.(日眼会誌127:621-627,2023)

キーワード
偽重複乳頭, swept-source光干渉断層計(SS-OCT)
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