論文抄録

第127巻第7号

臨床研究

内因性眼内炎の起因菌,原因疾患,視力予後に関する後ろ向き検討
北村 力, 神田 貴之, 竹内 大
防衛医科大学校眼科学講座

目 的:内因性眼内炎の原因疾患,起因菌,発症から手術までの期間を比較し,視力予後の改善につながる因子を調査すること.
対象と方法:当科の診療録をもとに,2013年4月~2022年2月に内因性眼内炎と診断された13例14眼に対し,後ろ向き調査を実施した.
結 果:患者の平均年齢は76.2歳(範囲:42~89歳)で,男性7例,女性6例であり,細菌性が7例,真菌性が2例,起因菌不明が4例であった.14眼のうち硝子体手術前後の視力を確認できたのは7眼で,術後視力のみ確認できたのは2眼であった.手術前後の視力を比較できた7眼のうち,視力改善群は4眼,非改善群は3眼であった.視力改善群4眼の起因菌はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)で(のこり2眼は不明),非改善群3眼の起因菌は肺炎桿菌およびG群連鎖球菌であった(のこり1眼は不明).
結 論:全身状態が不良の患者では,さまざまな事由により内因性眼内炎が惹起されうる.そのような症例に対して早期の治療介入を行うことで,起因菌によっては内因性眼内炎の視力予後が改善される可能性がある.(日眼会誌127:667-671,2023)

キーワード
内因性眼内炎, 硝子体手術, 視力予後, 真菌性, 細菌性
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