目　的：部分調節性内斜視の手術成績および予後因子を調査すること．
方　法：本研究は後ろ向き観察研究であり，術前にFresnel膜プリズムによる光学的治療〔古典的prism adaptation test（PAT）〕または外来検査時のみのPATを実施した部分調節性内斜視42例〔年齢5.9±2.7歳（平均値±標準偏差）〕を対象とした．手術矯正量としての矯正目標角は，PAT後の斜視角（PAT角）や増強法（遠見屈折矯正斜視角+近見屈折未矯正斜視角の平均）を参考に決定した．手術成功は，術後6～12か月の眼位が遠近ともに±8 prism diopters（PD）以内，または斜位ありと定義した．月齢（発症・手術時），屈折度，術前後斜視角，PAT角，増加角（PAT前後差），矯正目標角，術前後両眼視機能を調査し，手術成績と関連する因子を検討した．
結　果：術前斜視角は遠見31.2±10.8 PD，近見36.9±11.4 PDで，術後斜視角は遠見4.2±8.5 PD，近見5.1±8.9 PDであった．成功群（32例）と非成功群（10例）の比較では，発症月齢（32±15か月，18±12か月，p=0.01），術前遠見斜視角（29.5±10.1 PD，37.7±10.9 PD，p=0.03），術前近見斜視角（34.3±9.6 PD，45.0±13.5 PD，p=0.008），PAT角（34.0±9.4 PD，44.7±9.0 PD，p=0.003）に有意差を認めた．術後立体視を測定できた39例中，良好群（3,000秒以下）は27例，不良群（立体視なし）は12例であり，発症月齢は良好群で有意に高かった（p=0.002）．
結　論：術後短期の経過では，良好な手術成績は高い発症月齢，小さい術前斜視角と，良好な術後立体視は高い発症月齢と関連していた．（日眼会誌127：680-688，2023）