目 的:日本人の地域在住中高年者の角膜内皮細胞密度(CECD)分布を明らかにすること.
対象と方法:「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」第二次調査(2000~2002年)に参加し眼手術の既往のない地域住民の中高年者1,919名〔男性997名,女性922名,年齢59.0±11.1歳(平均値±標準偏差)〕を対象とし,CECDはスペキュラーマイクロスコープ(SP-2000,トプコン)にて測定し,右眼データを採用した.日本角膜学会が定めた角膜内皮障害の重症度分類を用い,性別・年代ごとの集計を行った.CECDを目的変数とし,性別,年代,および性別と年代の交互作用を説明変数とする一般線形モデル(GLM)による解析(SAS Institute)を行った.
結 果:角膜内皮障害の重症度分類は,正常:1,868眼(97.3%),Grade 1:47眼(2.4%),Grade 2:4眼(0.2%),Grade 3:0眼(0%),Grade 4:0眼(0%)であった.CECDは年代が上がるにつれて有意に減少した(F=5.58,p=0.0002).また女性よりも男性で有意に高かった(F=10.35,p=0.0013).CECDは年率約0.14%の減少であった.
結 論:地域在住中高年者における非術眼のCECD減少率は推定年率0.14%であり,CECDは男性と比較し女性で低値であった.(日眼会誌127:741-747,2023)