論文抄録

第127巻第8号

臨床研究

地域在住中高年者の角膜内皮細胞密度分布に関する検討
福岡 秀記1)2), 丹下 智香子2), 西田 裕紀子2), 大塚 礼2), 安藤 富士子2)3), 下方 浩史2)4)
1)京都府立医科大学眼科学教室
2)国立研究開発法人国立長寿医療研究センター研究所老化疫学研究部
3)愛知淑徳大学健康医療科学部スポーツ・健康医科学科
4)名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科

目 的:日本人の地域在住中高年者の角膜内皮細胞密度(CECD)分布を明らかにすること.
対象と方法:「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」第二次調査(2000~2002年)に参加し眼手術の既往のない地域住民の中高年者1,919名〔男性997名,女性922名,年齢59.0±11.1歳(平均値±標準偏差)〕を対象とし,CECDはスペキュラーマイクロスコープ(SP-2000,トプコン)にて測定し,右眼データを採用した.日本角膜学会が定めた角膜内皮障害の重症度分類を用い,性別・年代ごとの集計を行った.CECDを目的変数とし,性別,年代,および性別と年代の交互作用を説明変数とする一般線形モデル(GLM)による解析(SAS Institute)を行った.
結 果:角膜内皮障害の重症度分類は,正常:1,868眼(97.3%),Grade 1:47眼(2.4%),Grade 2:4眼(0.2%),Grade 3:0眼(0%),Grade 4:0眼(0%)であった.CECDは年代が上がるにつれて有意に減少した(F=5.58,p=0.0002).また女性よりも男性で有意に高かった(F=10.35,p=0.0013).CECDは年率約0.14%の減少であった.
結 論:地域在住中高年者における非術眼のCECD減少率は推定年率0.14%であり,CECDは男性と比較し女性で低値であった.(日眼会誌127:741-747,2023)

キーワード
角膜内皮細胞密度(CECD), スペキュラーマイクロスコープ, 角膜内皮障害重症度分類, 地域在住中高年者
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〒602-0841 京都市上京区河原町通り広小路上る梶井町465 京都府立医科大学眼科学教室 福岡 秀記
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