論文抄録

第127巻第8号

臨床研究

運動介入が視覚障害者にもたらす心身面への効果検討
清水 朋美1), 樋口 幸治2), 山下 文弥2), 矢田部 あつ子2), 冨安 幸志2), 堀 寛爾1), 世古 裕子3), 緒方 徹4)
1)国立障害者リハビリテーションセンター病院第二診療部
2)国立障害者リハビリテーションセンター病院障害者健康増進・運動医科学支援センター
3)国立障害者リハビリテーションセンター研究所
4)東京大学大学院医学系研究科リハビリテーション医学

目 的:運動介入が視覚障害者にもたらす心身面への効果を検討すること.
対象と方法:「良いほうの眼の矯正視力が0.5未満」あるいは「視野に暗点や欠損がある(両眼,片眼を問わず)」の基準を満たす20歳以上80歳未満を対象とした.被験者は計60分間の運動介入プログラムを8週の間毎日実施し,運動療法士が2週ごとに,体脂肪率,平均握力,最大酸素摂取量,2ステップ値を測定した.運動介入前後の0週目と8週目にProfile of Mood States, 2nd Edition日本語版(POMS2)とThe 25-item National Eye Institute Visual Functioning Questionnaire(VFQ-25)による調査を実施し,介入前後で得られたデータを比較した.また,運動介入終了時にアンケート調査を実施した.
結 果:2ステップ値は有意に改善したが,POMS2およびVFQ-25では改善傾向を示したものの有意差はみられなかった.アンケートでは,全般的に満足度が高く,運動介入プログラムに望む改善として,「同じプログラムを受けている他の人との交流」,「音声ガイド付きの動画」の順に意見が多かった.
結 論:視覚障害者への運動介入は心身面を改善できる可能性がある.(日眼会誌127:748-755,2023)

キーワード
視覚障害, 運動介入, 健康増進, 心の健康, ロコモティブシンドローム
別刷請求先
〒359-8555 所沢市並木4-1 国立障害者リハビリテーションセンター病院第二診療部 清水 朋美
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