論文抄録

第127巻第9号

臨床研究

Kyoto Glaucoma Cohort StudyにおけるFuchs角膜内皮ジストロフィの有病率
冨岡 靖史1), 北澤 耕司1), 福岡 秀記1), 池田 陽子2), 上野 盛夫1), 外園 千恵1), 木下 茂3)
1)京都府立医科大学眼科学教室
2)御池眼科池田クリニック
3)京都府立医科大学感覚器未来医療学

目 的:欧米におけるFuchs角膜内皮ジストロフィ(FECD)の有病率は約4~11%であることが知られている.京都府立医科大学では2005年より緑内障ゲノム研究を目的としたKyoto Glaucoma Cohort Study(KGC)を京都地域で開始し,ボランティアによる正常対照者(非緑内障者)のデータ収集を行っている.そこで今回,KGCのボランティア参加者における角膜内皮異常の頻度を調査し,FECDの有病率を検討した.
対象と方法:2005年3月~2020年3月にKGCに参加したボランティア2,480例のうち本研究に同意し,スペキュラマイクロスコープ(TOMEY EM-3000™,トーメーコーポレーション)を撮像した40歳以上の1,250例〔男性364例,女性886例,66.5±8.3歳(平均値±標準偏差)〕を対象とした.右眼の角膜中央部の内皮スペキュラー画像をスクリーニングの対象とし,一次スクリーニングでは角膜内皮細胞にguttaeを認めたFECD疑いを抽出した.また,角膜の専門医3名で二次スクリーニングを行い,内皮細胞異常,滴状角膜,confluentな滴状角膜に分類した.
結 果:一次スクリーニングでは1,250眼中55眼(4.4%)が抽出され,そのうち11眼を内皮細胞異常(0.9%),32眼を滴状角膜(2.5%),12眼をconfluentな滴状角膜(1.0%)と判定した.FECD群において角膜浮腫を来していた症例はみられなかった.また,対象の中に後部多形性角膜ジストロフィやposterior corneal vesicleを示す例は含まれていなかった.
結 論:KGCにおけるFECDの有病率は3.5%であった.(日眼会誌127:791-796,2023)

キーワード
Fuchs角膜内皮ジストロフィ, 滴状角膜, スペキュラマイクロスコープ
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