目　的：網膜中心静脈閉塞症（CRVO）に伴う黄斑浮腫（ME）に対し，抗血管内皮増殖因子（VEGF）薬の硝子体内投与を行い，視力予後に影響を及ぼす因子を検討した．
対象と方法：2017年3月～2021年9月に大垣市民病院眼科にて，無治療の非虚血型CRVOに伴うMEに対し抗VEGF薬硝子体内投与を行った13例13眼（男性7例，女性6例）を対象とした．投与前，投与翌日，投与後1週，1か月，3か月，6か月，12か月に，矯正視力，中心窩網膜厚（CRT），前房フレアおよびflicker網膜電図（ERG）の頂点潜時を測定した．投与後12か月の矯正視力と投与前のCRT，前房フレアおよび頂点潜時との相関関係，ならびに投与前から投与後12か月にかけてlogarithmic minimum angle of resolution（logMAR）0.3以上減少したものを改善群，それ未満を非改善群とし，各検査項目を比較検討した．危険率5%未満を有意とした．
結　果：投与後12か月の矯正視力と投与前の頂点潜時（r=0.605，p=0.028）およびCRT（r=0.635，p=0.020）との間に有意な相関関係を認めた．また，改善群および非改善群の比較において，初診時CRTおよび前房フレアでは有意差はなかったが（それぞれp=0.284，p=0.943），初診時頂点潜時では有意差を認めた（p=0.030）．
結　論：初診時に頂点潜時の延長を有する症例では，視力予後が不良であることが示唆された．（日眼会誌127：797-803，2023）