目 的:厚生労働省難病政策班・前眼部難病班が作成した前眼部形成異常(ASD)の診療ガイドライン(GL)の普及状況の実態を調査した.
対象と方法:2022年8月~10月に日本眼科学会専門医制度認定研修施設に調査票を郵送し,回答を集計した.
結 果:965施設中195施設から回答を得た(20.2%).ASD患者の年間の診療症例数は0例が57.9%,1例以上5例未満が31.3%,5例以上が9.7%で,年間の指定難病申請を行った症例数は0例が88.7%,1例以上が8.7%であった.GLを知っているが64.1%,診療においてGLを参考にしているが71.8%であり,GLに準じた診療を行っているのは69.2%で,準じていないと回答したのは23.1%であった.GLに準じた診療が行われていない理由は,GLに賛同できない・分からないためが17.3%,患者側の要望のためが23.1%などであった.GLの使用目的は施設内の治療の標準化が81.2%であった.GLの評価として,クリニカルクエスチョン(CQ)の数は適当が77.9%,CQが臨床現場に即しているが75.8%,推奨は分かりやすいが81.1%,解説の内容は役に立つが89.6%,本邦の現状を加味しているが65.4%であった.GLの有用性については診療の標準化が84.7%,ASD認知度の向上が61.2%であった.
結 論:ASD症例を有する施設は少なく,GLの認知度に課題があると考えられたが,概ね活用されていた.(日眼会誌128:14-20,2024)