目 的:緑内障患者の電子カルテ上の診療記録から項目別にデータを自動的に抽出しまとめることのできる人工知能(AI)モデルを,Bidirectional Encoder Representations from Transformers(BERT)を用いて作成すること.
対象と方法:2020年8月~2021年8月に島根大学医学部附属病院緑内障外来への通院歴のある緑内障患者1,122名のうち,5回以上通院した患者1,091名を対象とした.そのうち250名の診療記録をテキストデータとして書き出し,単語に分割し,それぞれの単語に対応する項目を正解ラベルとして手動で付与してデータセットを作成した.京都大学が開発したBERT日本語Pretrainedモデルを使用し,150名分のデータセットを用いて5分割交差検証による転移学習を行わせ,AIモデル(緑内障BERT)を作成した.学習に使用しなかった100名分のデータセットを用いて性能を評価した.
結 果:緑内障BERTは,診療記録から眼圧,裸眼および矯正視力,自覚屈折度数,Humphrey自動視野計の測定データ,使用点眼薬などの項目を自動的に抽出することができた.緑内障BERTの性能は,正解率99.9%,適合率92.8%,再現率93.3%,F値93.0%であった.
結 論:BERTを用いた転移学習により,限られた数のデータセットを使用して診療情報を抽出するAIの作成が可能であった.(日眼会誌128:21-29,2024)