論文抄録

第128巻第1号

臨床研究

学会原著
第127回日眼総会
軽度角膜乱視例へのHolladay Total SIA計算式を用いた3焦点トーリック眼内レンズの選択
ビッセン宮島 弘子1), 太田 友香1), George Pettit2)
1)東京歯科大学水道橋病院眼科
2)Alcon Vision LLC

目 的:3焦点眼内レンズの挿入において,遠方から近方にわたって良好な裸眼視力を得るためには,角膜乱視を矯正するトーリックモデルが有用である.今回,新しいHolladay Total SIA計算式(以下,Total SIA式)を用いて3焦点トーリック眼内レンズが選択された症例において,他のトーリックカリキュレータを用いた場合のモデル選択と術後屈折乱視を比較した.
対象と方法:対象はTotal SIA式でAcrySof IQ PanOptix Toric IOLモデルTFNT20(以下,T2)が選択された41眼である.術前のデータを用いて,Holladay Toric計算式(以下,Holladay式)とBarrett Toric計算式(以下,Barrett式)に入力し,角膜乱視と推奨されたトーリックモデルの種類,T2が選択された症例数とそれらの術後30~60日における屈折乱視を比較した.
結 果:Total SIA式でT2が選択された41眼中,同じT2モデルはHolladay式で28眼,Barrett式で26眼に推奨された.これらの症例の術前角膜乱視の平均はTotal SIA式が0.64 D,Holladay式が0.67 D,Barrett式が0.56 Dと,どの計算式でも0.75 D以下であった.倍角座標による乱視の分布はTotal SIA式で選択された症例と比較して,Holladay式では直乱視,Barrett式では倒乱視に円柱度数が1.5 DのT3モデルが推奨される傾向であった.T2が選択された症例の術後屈折乱視はTotal SIA式で0.05±0.15 D(平均値±標準偏差),Holladay式で0.06±0.16 D,Barrett式で0.05±0.14 Dと,どの計算式を用いた症例でも軽減していた.
結 論:T2が選択された症例はトーリック計算式により異なっていたが,Total SIA式で選択された症例における術後屈折乱視は,他のトーリック計算式でT2が推奨された症例と同様に良好な結果を示した.(日眼会誌128:9-13,2024)

キーワード
3焦点眼内レンズ, トーリック眼内レンズ, トーリックカリキュレータ, 軽度角膜乱視, 視力
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