目 的:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時の国内の外出自粛要請が眼科救急に与えた影響をレトロスペクティブに検討すること.
対象と方法:2019年4月~2021年7月に京都府立医科大学附属病院の眼科救急を受診した患者,および同期間に裂孔原性網膜剝離(RRD)と診断された患者を対象とした.COVID-19流行前の2019年度,COVID-19流行中の2020年度,外出自粛要請期間(以下,自粛期間)の3期間での眼科救急受診数,疾患内訳,RRDにおける黄斑剝離,増殖硝子体網膜症(PVR)の割合を比較した.
結 果:眼科救急受診数は2019年度が683人,2020年度が349人,自粛期間(172日)が220人(年換算466人)であり,2020年度および自粛期間の救急受診数は2019年度と比較して減少した.疾患内訳は9分野中,緑内障,外眼部疾患を除く7分野において有意な変化はなかった.救急受診者,および一般外来受診患者を含む総受診患者においてRRDと診断されたのはそれぞれ79人,407人であり,そのうち黄斑剝離を伴う症例は2020年度が9人(40.9%,p=0.80),78人(51.0%,p=0.26),自粛期間が6人(40.0%,p=0.75),44人(56.4%,p=0.97)であり,2019年度の19人(44.2%),111人(57.5%)と比較して,有意な変化はなかった.また,総受診患者におけるRRDのうちPVRの症例は2019年度が4人(2.1%),2020年度が1人(0.7%,p=0.38),自粛期間が1人(1.3%,p=1)であり,有意な変化はなかった.
結 論:COVID-19流行に伴い当院での眼科救急受診数は減少したが,急性疾患であるRRDにおいては黄斑剝離を伴う症例とPVRの割合に有意な変化はなかった.(日眼会誌128:769-774,2024)