論文抄録

第128巻第2号

症例報告

眼内SARS-CoV-2 S-抗体価の上昇がみられた内因性眼内炎の1例
坂口 裕和1), 中島 温代1), 井畑 雄太郎1), 石澤 聡子1), 宮瀬 太志1), 川上 秀昭2), 望月 清文1)
1)岐阜大学大学院医学系研究科感覚運動医学講座眼科学分野
2)岐阜市民病院眼科

背 景:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の動態および眼組織への影響に関しては不明な点が多い.今回,眼内炎症例で硝子体液のSARS-CoV-2を含めた微生物学的検査を行ったので報告する.
症 例:46歳,女性.腹部腫瘍術後化学療法中にCOVID-19に罹患し,4日後に中心静脈(CV)ポート感染,さらにその翌日に往診にて右眼の眼内炎が判明した.CVポート抜去後,抗菌薬の全身投与を開始し,硝子体内抗菌薬の投与も施行された.CVポート先端からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出された.COVID-19規制緩和後,各種検査を行った.矯正視力は右0.5で,硝子体混濁,網膜電図振幅の減少を認め,直ちに硝子体手術を施行した.硝子体液培養は陰性,硝子体液SARS-CoV-2ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は陰性であったが,SARS-CoV-2 S-抗体は11,200 U/mLと高値を示した.最終視力は右1.2であった.
結 論:眼内SARS-CoV-2を含めた微生物学的検査を行い,SARS-CoV-2 S-抗体が高値を示したMRSA眼内炎症例を経験した.(日眼会誌128:113-118,2024)

キーワード
新型コロナウイルス感染症(COVID-19), 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2), SARS-CoV-2-抗体, ポリメラーゼ連鎖反応(PCR), 眼内炎
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〒501-1194 岐阜市柳戸1-1 岐阜大学大学院医学系研究科感覚運動医学講座眼科学分野 坂口 裕和
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