背 景:脈絡膜母斑に伴う網膜下液(SRF)に対して低用量光線力学療法(PDT)を施行し著効した1例を経験したため報告する.
症 例:49歳,男性.眼精疲労,右眼の歪視の精査を目的に当院を紹介受診となった.初診時の視力は右0.08(1.0×-2.75 D=cyl-0.75 D Ax 170°)であった.眼底検査にて右眼黄斑部に黒褐色の色素変化を認め,光干渉断層計にて黄斑部にSRFと,脈絡膜に表面が高輝度で内部の信号の減衰した隆起を認めた.左眼に異常は認めなかった.フルオレセイン蛍光眼底造影では隆起性病変の内部に初期から顆粒状過蛍光を認め,後期にかけて漏出がやや拡大し,インドシアニングリーン蛍光眼底造影では眼底所見に一致した大きさ約4.8 mmの低蛍光斑を認めた.脈絡膜母斑内の網膜色素上皮障害に伴うSRFと考え,低用量PDTを施行したところ,SRFは減少し,施行後1年で完全に消失した.その後SRFの再燃なく経過していたが,約3年後に再燃した.再度の低用量PDTを施行し,SRFの減少を確認できた.
結 論:脈絡膜母斑に伴うSRFに対してPDTが有効であった症例を経験した.母斑そのものへの治療ではないため,今後SRFが再燃する可能性は考えられる.そのため治療後も長期的な観察が必要である.(日眼会誌128:119-126,2024)