論文抄録

第128巻第2号

臨床研究

裂孔原性網膜剝離に合併した黄斑円孔に対する内境界膜非剝離による治療成績
西塚 弘一1)2), 西 勝弘2), 山下 英俊2)
1)埼玉医科大学総合医療センター眼科
2)山形大学医学部視覚病態学分野

目 的:裂孔原性網膜剝離(RRD)の硝子体手術時に術中光干渉断層計(OCT)にて初めて明らかとなった黄斑円孔(MH)の合併に対する治療方針として,内境界膜(ILM)剝離を併用するか否かについては一定した見解がなく,治療成績の報告も少ない.本研究では術中OCTによって初めて診断されたRRDに合併したMHに対してILM剝離を併用しない硝子体手術治療における術後成績の報告を行った.
対象と方法:2018年11月~2019年7月に山形大学医学部附属病院にて硝子体手術を行ったRRD 78例のうち,周辺部網膜に明らかな原因裂孔があり術中OCTにて初めてMHの合併を確認できた4例4眼〔男性4例,年齢62.8±1.7歳(平均値±標準偏差)〕を後ろ向きに検討した.術中OCTにてMHの合併を確認したのちにILM剝離は併用せず,網膜下液の排液は周辺部原因裂孔から行った.空気またはガスタンポナーデにて手術を終了し,術後は眼内タンポナーデが50%に減少するまで腹臥位を指示した.
結 果:術中OCTによるMHの円孔径は277.7±67.0 μmであった.初回手術後のOCTにて4眼中4眼(100%)にMHの閉鎖を術後8.3±2.9日で認めた.
結 論:RRDに合併したMHでは,ILM剝離を併用せずに通常の硝子体手術と空気またはガスタンポナーデを行うことで円孔の閉鎖が得られた.(日眼会誌128:96-102,2024)

キーワード
裂孔原性網膜剝離(RRD), 黄斑円孔(MH), 術中光干渉断層計(OCT)
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