論文抄録

第128巻第4号

臨床研究

学会原著
第127回日眼総会
遺伝性網膜ジストロフィにおける遺伝子パネル検査を用いた遺伝子診断の先進医療
前田 亜希子1)2), 横田 聡1)2), 浦川 優作1)2), 吉田 晶子1), 稲葉 慧1), 河合 加奈子1), 松崎 光博1)2), 酒井 大輝1)2), 田保 和也1), 木場 みゆき1), 山本 翠1), 許沢 尚弘1), 北畑 将平1), 前田 忠郎1), 万代 道子1), 村上 遥香4), 井上 沙聡4), 中村 奈津子1)3), 藤波 芳3)4), 山澤 一樹4), 角田 和繁3), 森貞 直哉5), 平見 恭彦1)2), 栗本 康夫1)2), 髙橋 政代1)6)
1)神戸アイセンター病院
2)神戸市立医療センター中央市民病院眼科
3)国立病院機構東京医療センター眼科
4)国立病院機構東京医療センター遺伝診療科
5)兵庫県立こども病院臨床遺伝科
6)株式会社ビジョンケア

目 的:遺伝性網膜ジストロフィ(IRD)では,遺伝子特異的治療の開発が進んでおり,原因遺伝子の同定が将来の治療選択に役立つ可能性がある.また,原因遺伝子を同定することによる遺伝形式の決定が,患者とその家族にとって有用な情報となる.本研究では,先進医療として網羅的遺伝子パネル検査とその結果に基づく情報提供を実施し,臨床フローの有益性を検討した.
対象と方法:国内2施設においてIRD患者101名に遺伝カウンセリングを提供し,遺伝学的検査を希望した100名から採血を行った.血液検体からDNAを抽出し,疾患原因遺伝子82遺伝子の解析を行った.解析結果は患者臨床症状とともに遺伝医療の専門家による会議体(エキスパートパネル)にて検討され,原因遺伝子の同定とロービジョンケアを含む治療計画の提案を行った.
結 果:原因遺伝子の同定率は41.0%であり,American College of Medical Genetics and Genomics(ACMG)ガイドラインによる判定では臨床的意義不明バリアント(VUS)であるもののエキスパートパネルで患者に開示すべきと結論した症例を含めると55.0%となった.遺伝カウンセリングの患者満足度は高く(検査前98.0%,結果開示後96.0%),結果開示後1年には80名中32名(40.0%)の患者をロービジョンケアへつなげることができた.
結 論:本臨床フローの有益性が示唆された.(日眼会誌128:305-310,2024)

キーワード
遺伝性網膜ジストロフィ(IRD), 先進医療, 遺伝学的検査, 遺伝カウンセリング, ロービジョンケア
別刷請求先
〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-1-8 神戸アイセンター病院 前田 亜希子
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