目 的:厚生労働省難病政策班が作成した無虹彩症の診療ガイドライン(GL)の普及状況をモニタリングし,GLの改善点を明らかにすること.
対象と方法:2022年8月~10月に日本眼科学会専門医制度認定研修施設の代表者宛てに調査票を郵送し,Webもしくは郵送での回答を集計した.
結 果:965施設中227施設から回答を得た(回答率23.5%).回答した眼科医の経験年数は20年以上30年未満が37.9%,無虹彩症患者の年間の診療症例数は0例が55.5%,1例以上4例以下が37.0%,指定難病申請を行った症例数は0例が84.1%,1例以上4例以下が11.5%であった.GLの認知度は67.1%,診療において参考にしているが59.8%,少しでもGLに準じた診療が行われているのは76.8%,まったく行われていないのが23.2%であった.GLに準じた診療が行われない理由は患者側の要望のためが21.1%であった.GLの使用目的は施設内の治療の標準化が79.9%であった.GLの評価として,クリニカルクエスチョン(CQ)の数は適当が85.0%,CQが臨床現場に即しているが75.9%,推奨が分かりやすいが79.8%,解説の内容は役に立つが86.5%,本邦の現状を加味しているが67.6%であった.GLの有用性については診療の標準化が82.7%であった.
結 論:回答率がやや低いものの,無虹彩症のGLは一定の評価を得ていること,認知度は回答全体の3分の2であることが確認された.本調査結果をもとに,今後さらなる普及啓発やGLの改訂を行いたいと考えている.(日眼会誌128:311-319,2024)