論文抄録

第128巻第4号

臨床研究

学会原著
第127回日眼総会
片眼性黄斑上膜の両眼開放下における変視の特徴と硝子体手術の効果
鈴木 奏子, 若林 美宏, 湯口 泰二郎, 村瀬 めぐみ, 小島 なぎさ, 木下 亜耶, 竹村 香, 臼井 嘉彦, 馬詰 和比古, 後藤 浩
東京医科大学臨床医学系眼科学分野

目 的:特発性黄斑上膜(ERM)は片眼性であっても両眼開放下で変視を訴える場合がある.両眼開放下で変視の自覚がある片眼性ERM患者の特徴と,硝子体手術の効果について検討した.
対象と方法:2019年12月~2022年4月に東京医科大学病院眼科で硝子体手術を施行した片眼性ERM 40例を,術前の両眼開放下における変視の自覚の有無で2群に分類した.この2群間の視機能を比較検討し,さらに両眼開放下の変視(+)群の術後6か月における視機能を評価した.検査項目はM-CHARTS™で測定した垂直経線の変視量と水平経線の変視量およびそれらの平均変視量,Titmus Stereo Testを用いて測定した立体視差である.なお,優位眼は術前にhole-in-cardで特定した.
結 果:両眼開放下の変視(+)群は12例(30%)で,患眼の平均変視量(中央値)は1.45°と,変視(-)群の0.60°と比較して有意に高値であり(p<0.001),患者が変視を自覚する患眼の平均変視量のカットオフ値は1.15°〔p<0.0001,area under the curve(AUC)0.90,感度83%,特異度86%〕であった.患眼の平均変視量が高度(1.0°以上)であるにもかかわらず両眼開放下で変視の自覚がない9例の優位眼は,有意に健眼(8例,89%)であった(p<0.05).両眼開放下の変視(+)群の両眼開放下の平均変視量(中央値)は術前0.25°から術後0°と有意に減少し(p<0.05),7例(58%)で両眼開放下の変視が消失,立体視差も術前200"から100"へと改善した(p<0.05).
結 論:患眼の変視が高度である片眼性ERMは,両眼開放下でも変視を自覚することがある.これらの症例に硝子体手術を行うことで両眼開放下の変視は減少し,立体視も改善することが明らかになった.(日眼会誌128:320-325,2024)

キーワード
黄斑上膜, 硝子体手術, 変視, 立体視, 優位眼
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