背 景:化膿性肉芽腫(PG)は血管腫瘍に分類されているが,その病態は不明,呼称が統一されていない,重複腫瘍などの問題がある.今回,一部に蔓状血管腫様の臨床所見を伴ったPGの1例を経験したので報告する.
症 例:76歳,男性.右眼結膜からの間欠的出血と腫瘤脱出で近医を受診し,切除が試みられたが出血が止まらず,二本松眼科病院に緊急紹介された.右上眼瞼結膜に茸状の腫瘤がみられ,傘部は丸く白苔に覆われていた.一方,茎部は暗赤色の血管が無秩序に絡み合っていた.臨床所見が傘部と茎部で異なっているため蔓状血管腫との重複を疑い,基部瞼板を含め全切除した.病理組織学的検査の結果,傘部,茎部ともに慢性炎症細胞と丸みを帯びた内皮細胞を有する毛細血管腫小葉で構成され,膠原線維束を伴う浮腫性肉芽組織であることが分かり診断はいずれもPGであった.しかし,小葉は,傘部ではフィブリン層下の深部に存在していたのに対し,茎部では上皮直下の表層に存在していた.
結 論:本症例の茎部で血管が怒張・膨大していたのは,周囲からの圧迫を受けなかったためである.PGでは,同じ血管腫小葉でも,その存在位置や周囲の状態により臨床所見が変容し,重複腫瘍との鑑別や治療方針の決定が難しい場合がある.(日眼会誌128:341-347,2024)