論文抄録

第128巻第4号

症例報告

トリアムシノロンアセトニド後部Tenon囊下注射後に炎症が再燃したブロルシズマブ関連眼内炎症の2例
朝鳥 洋介, 星野 順紀, 松本 英孝, 中村 考介, 秋山 英雄
群馬大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座眼科学

背 景:ブロルシズマブ硝子体内注射(IVBr)は,他の抗血管内皮増殖因子薬に比べ眼内炎症(IOI)の発生頻度が高い.今回,トリアムシノロンアセトニド後部Tenon囊下注射(STTA)によりIOIが改善傾向となった後に再燃した2例を経験したので報告する.
症 例:症例1は67歳,男性.右眼のポリープ状脈絡膜血管症の診断でIVBrによる治療を開始した.治療開始12日後に虹彩炎,硝子体炎,網膜静脈炎がみられ,ブロルシズマブ関連IOIと診断しSTTAを施行した.その後炎症は改善傾向であったが,治療開始2か月後に虹彩炎および硝子体炎の再燃と,新規の網膜動静脈炎がみられた.IOIの再燃としてSTTAを追加後,炎症は沈静化した.症例2は75歳,男性.左眼のpachychoroid neovasculopathyの診断でIVBrによる治療を開始した.治療開始1か月後に虹彩炎,硝子体炎,網膜動脈炎がみられ,ブロルシズマブ関連IOIと診断しSTTAを施行した.その後炎症は改善傾向であったが,治療開始5か月後に虹彩炎の再燃と新規の網膜動脈炎がみられた.IOIの再燃としてSTTAを追加後,炎症は沈静化した.
結 論:ブロルシズマブ関連IOIではSTTA後数か月で炎症が再燃する症例があるため,慎重な経過観察が必要である.(日眼会誌128:348-355,2024)

キーワード
ブロルシズマブ硝子体内注射(IVBr), ブロルシズマブ関連眼内炎症(IOI), トリアムシノロンアセトニド後部Tenon囊下注射(STTA), 滲出型加齢黄斑変性
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