背 景:ブロルシズマブ硝子体内注射(IVBr)は,他の抗血管内皮増殖因子薬に比べ眼内炎症(IOI)の発生頻度が高い.今回,トリアムシノロンアセトニド後部Tenon囊下注射(STTA)によりIOIが改善傾向となった後に再燃した2例を経験したので報告する.
症 例:症例1は67歳,男性.右眼のポリープ状脈絡膜血管症の診断でIVBrによる治療を開始した.治療開始12日後に虹彩炎,硝子体炎,網膜静脈炎がみられ,ブロルシズマブ関連IOIと診断しSTTAを施行した.その後炎症は改善傾向であったが,治療開始2か月後に虹彩炎および硝子体炎の再燃と,新規の網膜動静脈炎がみられた.IOIの再燃としてSTTAを追加後,炎症は沈静化した.症例2は75歳,男性.左眼のpachychoroid neovasculopathyの診断でIVBrによる治療を開始した.治療開始1か月後に虹彩炎,硝子体炎,網膜動脈炎がみられ,ブロルシズマブ関連IOIと診断しSTTAを施行した.その後炎症は改善傾向であったが,治療開始5か月後に虹彩炎の再燃と新規の網膜動脈炎がみられた.IOIの再燃としてSTTAを追加後,炎症は沈静化した.
結 論:ブロルシズマブ関連IOIではSTTA後数か月で炎症が再燃する症例があるため,慎重な経過観察が必要である.(日眼会誌128:348-355,2024)